榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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今週のお題「修学旅行の思い出」

今週のお題「修学旅行の思い出」

 

ふだんは妙に細かいことまで覚えている私だが、修学旅行の記憶がほとんどない。なぜだろう。

中学の修学旅行のことなど、ほぼ皆無だ。なんだか好きなひとのことばっかり考えていたような気がする。行った場所は沖縄だったが、白百合の塔と防空壕がとても恐ろしかったことを除けばあとは、バスですれ違う彼、コテージから出て来る彼、という2点しか覚えていないので、もしかしたら、告白しようとしていたのかもしれない。告白をしていないことは確かなのだが、ともかく大いに女子中学生だった。

 

高校では、北海道に行った。

学年でどのクラスも北海道、ということだけ決まっており、予算内であれば自分たちでコースを決められ、うちのクラスはグルメツアーになった。到着してすぐに、どっさりといくらとウニがのった、海鮮丼を食べた。

それから、写真でおぼろげながら覚えている観光地は、なにかの滝を見たことと、5つくらいの湖を見たこと、キツネ園のようなところに行ったことのみ。

あとは、トランクスのことしか覚えていない。

 

ある一室が、いわゆる未成年が口にしてはいけないふたつを喫するための部屋になっており、私は飲み物のほうを好んだため、その狭い部屋で、日本のやつが飲みたいなぁ、と思いながら、誰かが持ち込んだ辛い洋物を舐めていた。その部屋には、入れ替わり立ち替わり、様々な男子が入ってきては、飲み物を飲んだり、喫したりした。そのうちあたまがおかしくなった男子たちは、トランクスの見せ合いをはじめ、やがて、トランクスだけになった男子たちは、その時部屋にいた唯一の女子である私のまわりをかごめかごめのようにぐるぐるとまわり続けたのだった。私はトランクスを見ることも初めてだったが、正しいリアクションもわからなかったので、とりあえず平気な顔をしながら飲み続けた。

 

翌日、バスの中ではほとんど眠っていた。

途中でアナウンスがあって、窓の外に、網走刑務所を見た。

網走刑務所には立ち寄らないんだなぁ、と思った覚えがある。

 

半年後、ぐるぐるまわっていた男子の一人が学校のエントランスに自転車を乗り付けるとそれに乗ったまま、「あのとき、売女って何度も言ってごめんな!」とでっかい声でとつぜん謝ってきた。ぜんぜん覚えていなかった、しかも、ばいた、の意味がわかっていなかった。

それから、我々は、ずっと長いこと友だちで、先日も彼の展覧会を見てきたばかりだ。会うのは前回の展覧会以来で1年ぶりか。彼がどんな柄のトランクスをはいていたかは、もう忘れてしまったが、お題のタイミングと相まって、そんな出来事を思い出した。