榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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6月25日・26日・27日

6月25日

最近、店員に、万引きを疑う視線を投げかけられることが多い。鞄の持ち方が悪いのだろうか。目の光り方などに、なにか問題があるのだろうか。表情が鬱屈としているのだろうか。

クオカでパウンド型を見ている時、鞄の中の携帯が鳴ったので取り出そうとしたところで、足早に寄ってきたオカメのような店員が背後から「いらっしゃいませー!」と声をかけてきたのでギョッとした。私はパウンド型を選んで購入し、その袋を見せつけるように店員の前をぶらぶらと歩いた。オカメ店員は目を伏せていた。

 

夜、久しぶりに手首に蕁麻疹が出た。菱形の紋のような出方で、かっこ良かった。

 

 

26日

娘が俳句を作るので、私も勉強している。

又吉直樹と堀本裕樹の俳句入門書「芸人と俳人」を読了。又吉の俳句に関する発言は8割がた私の思っていることと同じだったので、いろいろなことが理解できて、ほんとうに読んで良かったと思った。

とくに、上五か下五に置いた言葉と、それ以外のつながりがまったく読み解けない、意味がわからない、と思っていたのが、ト書き的な風景を置いているのかとわかった途端、急に俳句が理解できたのが良かった。

それと、解釈がどうもピンとこなかったのだけれど、読み方は自由なのだ(むしろ自由にいろいろと読めるもののほうが良い句なのだ)、作る側も当てて欲しいわけではないのだと知って、俄然俳句のことが好きになった。それで、私も一句よんでみたいと思ったのだけれど、やはり私は俳句や短歌のように、短いことばでものごとを切り取る才能がぜんぜんないんだな…と思い知らされるばかり。

 

里山公園を一人歩いていると、炎天下の中、大きな亀が道に迷っていたので、池まで運んだ。外来種のアカミミガメだよなぁと思いつつも、干涸びてしまうのには忍びない。アカミミガメたちが住んでいる池の前に置くと、驚くような速さで水に入り、すいーっと泳いで行ってしまった。亀は岩のように重かった。この不気味な重さを俳句にできたらなぁと考えたが、やはり、一句もできあがらなかった。

 

 

27日

8:55の回しかない「レディ・バード」を観ようと、朝からいろいろがんばったのだが、車でしか間に合わない時間になり、車で行くと、家の近所がひどい渋滞で、あきらめて帰宅し、畳の上に寝転んで、風に吹かれながらスマホをながめた。

でも、そんなことではいけない、だって娘が入学してから映画を観に行ける日なんてずっとなかった(4月1日の「リメンバー・ミー」が最後だ)、今日ようやく設けられたのだから、と、今からでも観られそうな観たいものを探す、そして、13:00から「バーフバリ 王の凱旋 完全版」がやっていることを知り、横浜に出向いた。

この日は一日不思議な日だった。

たてた予定は全て覆って、結局、行き当たりばったりになって、でもそれが悪くないという、気ままな旅行のような一日だったのだ。いつもの店でエッグベネティクトを食べるつもりが、ふらっと話題のラーメン屋でつけ麺を食べることになり、選んだ肉が焼豚だったのに鶏ハムがきたのでそう言うと、別皿で焼豚を更にもらえることになったり、狙っていった店に目的のものがひとつもなかったのに別の店に全部あったり、と、なにかそういう風に全て進んでいる日。

はじめて観たバーフバリは、前回のお話のあらすじを最初に流してくれたこともあって、噂通りこれだけで観てもぜんぜん遜色なく3時間あったが面白く観れた。日本の戦国もののような、歌舞伎のような、神話のような、マンガのような、親しみやすいわかりやすいお話で、戦いもかっこよく、あととにかく人が多い。面白かったし満足した、が、しかし、面白いと話題になるものが、最近どうも、子どもっぽいなと思う。大人っぽくて面白いものがもっと観たい。大人っぽくて面白いものも、産業として成り立つ世界であってほしい。