榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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11月14日

週末の七五三に自分が着る着物を決めるのと虫干しを兼ねて、母の桐箪笥と格闘する。引き取ってきた時に、着れる状態のものだけしまい直したのだが、もうどんなものが収まっているのか全くわかっていない。

 

それにしてもたとう紙というのは、もっと進化できるはずではなかろうか。検索しにくいことこの上ない。小窓がついたからなんだというのだ。たとう紙の役割とは単にしまいやすくするだけ、紙は湿気を呼びやすいため現代では着物をそのまましまう人もいる。私も普段使いのいくつかや、気を使わない小紋などは、たとう紙に入れずそのまましまっている。

 

とりあえず湿気は一番下に溜まるので、一番やばそうな下の引き出しから着物を全て取り出す。たとう紙の中にボール紙を入れたままにしているのは祖母のものだ。ボール紙がひどいことになっているが、着物はかろうじて無事でほっとする。

中から出て来たのは、3枚の振り袖と、「散歩着」と書かれた木綿の着物、茶色の紬、大きな格子柄のポリエステルの着物。

振り袖は、一枚ダメになっていた。袖の半分の色が変色していて、模様の金糸部分が虫に食われたのか、割れている。地紋に吉祥文様を織り出した紋意匠に、南天のようなものが大きく描かれた重厚でかわいらしい着物なだけに、なんとなく諦めがつかず、畳んで別の箪笥の上に置く。置いたからといってどうなるわけでもないのだが。

振り袖、小学校の卒業式に袴が着たいといえば着せてやれそうだが、それでもまだあと5年はしまいこむことになるので、とりあえず、一度ばふばふと空気に触れさせ、たとう紙を新しいものにして「ふりそで」と表書いて再びしまう。一番下の段はしまいこむものを入れないほうが良いのかな…と思いながらも、そういうことはとりあえず後回し。

散歩着は衣紋掛けにかけて干し、紬は着て、ポリは捨てるかどうか迷い中で脇によけておく。

 

 

下から二段目を開け、まだしつけ糸がついている訪問着を見つける。ボルドー色の着物地に、小さな扇の柄が上品に入っている。このような上品な着物で、かつしつけ糸をつけっぱなしているというのは、祖母のものにちがいない。七五三にはこれを着ることに決め、衣紋掛けにかけて干す。

 

それから無地に近い小紋のものと、普段着とを、なんとなく同じ引き出しにしまい直してこの日は終了。

これは何の着物、どこの紬、何の時に作ったの、と、聞けないことがもどかしく、センチメンタルな気分になるも、冷静に考えてみれば、生前だって、母は、なんだったかしらと言ってほとんど覚えていなかったのだった。

 

夕飯は、夫が早く帰宅する日だったので春巻きを作った。

ここ3回くらい、揚げ油の中で爆発することが続いて嫌になってきちゃったのだが、片栗粉をきちんときかせ、炒めた具材をしっかり冷ましてから、春巻きの皮の裏書き通り巻いたらうまくいった。少し手間だけれど、中に火が通っているかの心配がない春巻きは、揚げ物の中では気楽だ。

10本揚げて、余ったらお弁当にと思っていたのだが、残らなかった。