榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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11月18日

週間天気予報では雨だった日曜日、半泣きの娘に、ママは晴れ女だから大丈夫と伝えていたら、3日前くらいから曇りマークに変わり、夫が「天気予報で、週末に現れる予定の低気圧がどこかに消えたって言ってた…」と怯えていたが、暑すぎず寒すぎずの七五三日和。

 

娘の着物を予約した時は午前中が取れなくて少しがっかりしたけれど、お昼の予約にしておいて本当によかった。

昨日は疲労困憊で出来なかった半衿つけをする。半分まで縫い付けて、裏返しにつけていることに気づくが、私ももうそんな私に慣れているので絶望はしない。粛々とやり直すのみ。そういえばまだ着物のしつけを取っていないことを思いだして、あわてて糸を抜こうとするが、うまくできない。手芸用はさみを持ち出し慎重に切っていく。先ほどのこともあり自分に信用がまったくないので、着物を切ってしまいそうで恐ろしい。わずかに糸玉は残っていたがそんなところ誰も見ないだろうともうそこで終わりにし、着付けに入る。さすがほぼ毎日着ていただけあってとてもスムーズ。伊達衿もなんのその。

ところが予習していなかったのが響いたのか、二重太鼓が決まらない。

しつけくらい昨日とっとけばよかったと後悔しながら、夫と娘に先に出てもらうことにして、思い切ってはじめから結び直すと、私史上最高に上手に二重太鼓を結ぶことができた。うれしい。

 

夫に連絡すると、男性は着付け室に入れないので喫茶して待っているという。鎌倉はすごい人出だけれど、コメダは空いているとのこと。遠方から鎌倉に日曜に来てコメダに入る人はいない。

着物屋に行くと、娘が鏡前で日本髪をまだ結っている最中だった。緊張して固まった表情の娘に手を振る。メイクをほどこしてもらうと、着付け自体はすぐに終わった。

夫に連絡をし、3人で鶴岡八幡宮に赴く。慣れない草履での歩みは遅く、娘に、靴に履き替えるか尋ねるのだが、さすが自分で着たいと言っただけあって頑としてこのまま行くという。段葛で、写真を撮ってくれる友人と会い、太鼓橋で、源平池の前で、手水をしながら、本宮をバックに、様々な写真を撮ってもらう。ありがたい。

 

おみくじをしたがる娘に、こんな日に凶が出たらどうするのと辞めるよう説得していたのだけれど娘は全く譲らず、ひいたおみくじは案の定末吉で、娘は大声で「ねがい、かなわず!! さがしもの、でず !! 試験、わろし!!」などと嬉々として読み上げていた。

 

本宮の控え室は、七五三の子どもを連れた大人でいっぱいだった。真っ黒い池の中で、きれいな金魚が顔をのぞかせているよう。ほぼ皆3世代で来ており、私たちのような3人だけという家族はいなかった。

祈祷中、頭を下げる場面では、娘は幼稚園のお茶で習った「両手で三角をつくってするお辞儀」で頭を下げていて、まるで、御さばきを受けている町娘のようだった。

 

鎌倉に住んでいる友だち一家も娘の晴れ着を見に来てくれた。

私たちの親戚は遠方どころか父は入院までしていて、折々で娘にさみしい思いをさせているんじゃないかと私は気にしているのだけれど、要所要所で友だちが助けてくれる。娘に対し、親戚がいっぱいいるみたいにしてくれて、いつもすごくありがたい。

 

帰宅し、私も着物を脱ぎ、夕飯の買い物に行ってくるねと出ようとしたとき、娘が私の腹に抱きついてきた。

頭をなでて、夢がひとつかなったね、と言うと、うん、といって「それと、口紅をしてみたいっていうのも夢だったから、それも叶ったの」と言う。

娘は肌が弱くフェイスペイントもさせたことがなかったから、口には出さなかったけれど憧れがあったのだろう。

 

夕飯は、録画したポケモンとぶらタモリを観ながら、海鮮ちゃんこ鍋を食べた。

出汁はコストコで買った久世福の鍋の出汁セットの中から、醤油出汁を選び、旬の鱈、鱈の白子、牡蠣、などを入れ、〆はきしめんにした。

 

親のつとめが終わった感がする。終わっていないけれど。

 

眠るまで、一人、携帯で撮った今日の娘を、何回も何回も何回も観た。

何回も観てしまうものなんだなあと思いながら、飽きずに眺めた。