榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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1月1日

大晦日に娘を寝かしつけて寝落ちしてしまい、安室奈美恵も宮本浩次も見れずに1時頃起きた。

 

正月の特番録画にそなえ、録画したものを消費せねば、と、新年一本目に観た映画は北野武監督の「龍三と七人の子分たち」で、正月に観るのにピッタリであった。

録画消費を続けているうちに、気づけば7時半になっており、雨戸を開ければすっかり朝。初日の出のことなどすっかり忘れていたのだった。

 

猫がごはんを食べず。何度か吐いて、丸くなって眠ったままだ。

 

午後、母の墓参りに行く。

母はお節が好きで、お節をつまみに三が日飲んでいるのが母の正月だった。

一昨年の正月、食べられない母になんとか食べてもらおうと、褒められようと、私も父も競うように、自分の用意したお節を母につまんでもらった。母は一口ずつ食べて、味をほめた。けれど、私のお年賀の、お菓子の入っただるまの容器には、願いの目は書き入れなかったのだ。

 

墓参り後、父の家へ。

父は、自分の母親が死んで喪中のくせに、「ほぼ一年経ってるし、いいのいいの!お重も買ったし、お節の中身は全部お父さんが用意するから!」と半ば強引に我々を呼びつけたくせに、案の定大晦日、明けて3時まで深酒しすぎぐったりしており、ソファーに横たわって、「悪いけどお重にお節詰めてくれない?」と指示をする。台所に行くと、無惨な状態でさわるのも嫌で、仕方なく椅子の上にお重を乗せて、そこに詰めて行った。

妹の一家が来て、妹は部屋部屋のあらゆるところを汚いと罵り、掃除を始めた。私が見るのも嫌なシンクの中も、「だからうちでやろうって言ったのに!!」と文句を言いながらガシガシこすって全てキレイにしてくれた。妹はやさしい人なのだ。

 

すぐに互いが持参してきたゲームで遊ぼうとする娘と甥3人に、「あんたたち、先にお仏壇にご挨拶して」と言って、言ってから、ああこれって自分が言われてきたまんまの言葉、と感じ入る。正月っぽい、家族っぽい、まわっていく言葉。

父に、墓参りしてきた報告をして、お父さんの供えた先月のお花、ぜんぜんまだしおれてなかったよ、と伝えると、パッと明るい顔になった。

 

母方の祖母の黒豆しか好きじゃない妹に、今年の黒豆を恐る恐る食べてもらう。ちょっとしわがよって、少し湯で加減が固めで、と言い訳する私に、「ちょっと固いけどおいしいよ」と妹は言ってくれたが、今年も全然食べてもらえなかった(甥と娘が何度もおかわりしたので救われた)。

父が案の定買いすぎた食材を、いらないいらないと言う妹と無理矢理わけあって、もっと対戦ゲームがしたいと言って泣く娘をひきずって、家路につく。

 

正月が、いちばん母の不在を感じ、そのことをいちばん悲しく感じる。誰もお節なんか好きじゃないのだ。