榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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7月10日

鎌倉の花火大会。

例年より一週間ほど早い開催だし、梅雨の中だし、雨天中止だからどうなのだろうと思っていたが、当日は晴れ、風が涼しい。去年は具合が悪くなる人も出たというほど蒸し暑かったそうなので、雨さえ降らなければこの時期の開催はいいのかもしれない。

 

バイト先の着物レンタル店で、今日は食事はパッと食べてすぐ業務に戻らなくてはならないので、家で仕事をする夫の弁当用と私の夕飯用にグリーンカレーを作り、私のお昼ご飯には、一口サンドイッチと甘いパンを買って持って行った。飲み物は水筒を入れて3本持参。夫と娘の夕飯は、二人でなんとかしてもらう予定。

 

午前中は着付のアシスタントと受付を行ったり来たり、人出が本格的になる午後は受付で働き続けた。

花火大会はお店にとって、一年で一番客入りのあるイベントで、この日ばかりは全員出勤、受け入れ枠も通常の2倍以上に設定されている。

それはもう聞きしに勝る混雑ぶりで、しかしいつもは1人でやっている業務を5人で行ったのでまわらないということはなかったが、ただひたすらに働いて、飲み物を飲みに行くのもままならなかった。たまに用があって着付け室に入ると、肌着の女の子がぎっしりなことにたじろいだ。

毎年のことだそうだけれど花火大会と知らずに予約をしているお客さんも中にはいて、そういう人々は早めに戻って来てしまう。そうすると着るお客さんと脱ぐお客さんでまたカオスとなる。

案内の終了時刻が来て、戻って来るお客さんのためにレイアウトを変えていると、外国人のカップルが戻って来た。男の子を案内して帯をといてやっていると、「コノキモノ、チョーキレイ!!」と言う。よろこんでいただけてなによりです、いい写真とれましたか、と聞くと頷いて「チョーチョータノシカッタ!!」とご機嫌。浴衣脱いでから花火見るんですかーと聞くと、花火なんか見ない見ない、と笑うので、えーもったいない!と言った。モッタイナイ、は、たしかそのままで通じるはず。

 

18時、本社の人々にあとをまかせて、ああ疲れた、ああ終わった、と、海へと向かう人の波に逆らいながらみんなでどやどや笑顔で帰る。

江の電は混雑で乗れないのでJRで帰った。持ち込みのお客さんたちの持ち物が全然足りてなくてでも買おうとしなくて困ったね、という話や、昨今流行の大人の兵児帯に関する困った話題で盛り上がった(忘れ物、全然ちがうものを持って来ている、3本で1セットになっている帯なんてもう別料金だよ!など)。

 

藤沢駅について、まっすぐ帰れないほど疲れてて、アイスを食べてから帰った。

まだお店にいる店長から、全員に業務連絡。今日の来客数が過去最高だったと知る。音がして、見れば、山の向こうで花火があがるのが見えた。こんなに遠くでもキレイだから、現地ではものすごくキレイに見えていることだろう。しばし見とれた。

 

疲労困憊で家にたどり着き、ああ、夕飯を作ってきてよかった、と楽しみに鍋を開けると、中はキレイに洗われており、一瞬なにがなんだかわからなかった。夫に、どういうことかとワナワナしながら尋ねると、あれ、夜、カレー食べて来るって言ってなかったっけ、お昼に多かったから夜も食べたんだ、と言われ、話をちゃんと聞いていないことと夕飯がないこと、しかも今回も全く謝らないことで怒り心頭、ヤマモリのレトルトカレーをあたためて書斎に引きあげ、食べて、寝た。眠る頃にはもう筋肉痛が始まっていた。