榛原誌

榛原トリコ・夜・芯etc…榛原たちの湘南暮らし

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11月11日

娘が長い留守番をしたがるので、たまに機会を作ってやる。

今回はいつぶりだったか、結構久しぶりになったと思う。

娘はしっかり者で慎重だけれど、慣れてくるとお調子者で雑になる。

鍵のことは私も夫も娘に確認し、その都度娘は「うるさいなちゃんとやってるよ」というていでランドセルに手をつっこみ「入ってる!」という返事をし、更に私は二人よりも先に出るときにカギ置き場に娘の鍵がないことを確認して安心して出て行った。

 

そもそも普段も娘の帰宅に間に合わない日は鍵を持たせて先に入ったり、すぐにそのまま習い事に出て行ってもらったりしている。

そのときはいつも置き手紙をして、必ず帰宅直後にメールするよう書いておく。たまにメールをし忘れていて私が電話することもあるけれど、とにかく、今日は、どうしてだか、帰宅予定時間から1時間経ってもメールはおろか、電話をしても出ないのだった。

 

メールせずに遊びに出てケータイ忘れて行ったとか…?

今朝、喉が少し痛いと言っていたから寝ちゃっているのだろうか。それならいいけど…

と思いながらバイトが終わる時間になっても、電話に出ない。

帰宅予定時間からはすでに3時間が経っており、電車の中で嫌な想像が膨らみ続けていく。まさか、まさか、まさか…。

最寄駅を降り、娘のケータイに電話をかけ続けながら、家が見えて来ると、部屋の明かりがついていない…!!

小雨の降る中、涙目で走り出し、玄関にたどり着くと、ランドセルをとなりにしたがえた娘が、体育座りをしていた。

私に気がつくと、よろよろと立ち上がり、抱きついて、鍵がない、と、わんわん泣く。

混乱し、え、だって、鍵、持ってったでしょ…? あ、学校でなくしちゃった…?と聞くと、わかんない、と泣く。雨が降るまでは庭で遊び、雨が降ってからは玄関で待っていたという。

そっか…と言いながら、とりあえずまだ震えている自分の身体を娘ごと抱くように家に入る。娘はトイレに行って戻ってくると、習い事のバッグのポケットに手を入れ、めちゃくちゃバツが悪そうな苦笑いで、「あ…」と鍵を出した。

「え!?じゃあ、鍵入っているって言っていたのは、なんだったの?」

娘はランドセルに手を入れて、それを引き出す。

握った手を開いて、中に入っていたのは、石だった。

「これをキーホルダーと、まちがえてたみたい…」

石と!! 鍵を !!!!!!!

しょ、小学生め〜〜〜!!!!!!!

 

娘には、ママがちぎれそうに心配していたことを伝えたが、叱らなかった。

まっ暗になっていく空の下で、雨の中で、 時間もわからず、どんなに不安だったろう。

今後大切なことは親がちゃんと目視しよう…と心に決め、あと、ランドセルに石を入れるのを娘に禁止した。

 

夕飯はポトフとバゲット。

二人とも精神的に疲れ果てて、すぐに寝てしまった。