3月9日
猫にごはんをあげる係は夫の役目で、いないときには娘の役目となる。
猫は、え?なんで今朝もまたおまえが?と訝しんで、得意げに餌袋を振って鳴らす娘をじっと見つめる。
塾の国語のテストで100点を取るために、と、娘は塾の宿題のほかに1日5枚国語の読解のドリルをやることを自分に課しており、間違えるとかんしゃくを起こしたり泣いたり怒ったり考えようとしなかったりし、普段それに付き合っているのは夫なのだけれど、初日で私はすぐにキレてしまい、ずっとまちがえないことなんて出来ないのだ、テストじゃないときにまちがえることができてラッキーじゃないか、まちがえる自分を受け止めろ、大体ママはあなたが0点だろうと100点だろうとどうでもいいけどあなたが決めた取り組みだから付き合ってあげているのになんだその態度は、そんなんなら採点も解き直しも一人でやってほしい、たいへん不愉快だ、とまくしたてる。
娘はわんわん泣きながら、ゆるして、と訴えるので、これまた虐待のようで気分が悪い。
寄り添いつづけることの難しさよ。あと0点だったらさすがにどうでもよくないな、と言い過ぎを反省。どうでもいい、も、本心だけれど言わないほうが教育上よかったのでは。大人になりたい。
強風の中、二人、自転車をこいで図書館に向かう。
娘はたんまり本とマンガを借りて、私も届いた本を受け取って、バーミアンでお昼ご飯を食べ、本屋で娘の本とドリルを買い、サンマルクカフェで娘はチョコバナナサンデーを、私はアイスラテにソフトクリームをのせて、お互いに本をもくもくと読む。二人とも時代ものだ。
おもむろに本から顔をあげ、「ママは小さい頃、毎週日曜日はじいじに喫茶店に連れていってもらって、ブルーベリーのかかったチーズケーキを食べさせてもらったんだよ。それがとても好きだった」と娘に伝えた。娘は、土曜日はいかなかったの、と聞いてきた。
それからスーパーでそれぞれの買い物をして、向かい風の中、川沿いの道を自転車で走る。あまりにひどい風で、二人でヒーヒー笑いながら自転車をこいだ。
関東地方ではこれが春一番で、湯船で娘は、春一番が災いをつれてきたらどうする?と言った。
録りためている「いだてん」の7話を見ながら夕飯を食べた。ブリの照り焼き、トマトとアボカドのサラダ、水菜の味噌汁。
オープニング、お兄ちゃんの手紙に、娘と顔を見合って安堵し喜び、更にラストのお兄ちゃんの登場シーン、その華に泣かされる。
3月8日
今日から1週間テキサスに出張の夫が、5時半に家を出ると言うので早起きをして車で駅まで送ってあげる。トランクからトランクを取り出して、行ってきますもありがとうも言わずに夫は片手をあげて行ってしまった。気持ちがはやっているのだろう、だがしかし、だ。
娘といっしょに家を出て、こちらも門が開くチャイムが聞こえてくるやいなや駆け出して、いってきますも振り向きもなし。
そういう人間性について考えながら江ノ電に乗ると、車内はセミフォーマルな奥様方がたくさん乗っていて、卒業式に季節を感じる。
お店ではスタッフもお客様も花粉がきつそうだったが、私は自宅で帰宅した娘がいちばん痒かった。何しろ娘は全ての休み時間を外遊びで過ごしている。もう、帰宅したら即風呂に入ってもらう日々を始めなくては。
娘はとうとう学校に1週間毎日スワローズのユニフォームを着ていった。ほぼカーディガンがわりだ。
夕飯は、華正樓の肉まんと野菜スープ。野菜スープは中華スープで、春雨をいれるつもりが切らしてしまっていて、物足りなかった。
3月7日
マスクをしていると、唇の動き込みで話を聞いている人が一定数いることがお客さんに説明する日々の中でわかった。
何が言いたいかと言うと、マスクをしていると、話が頭に入らない人が一定数いるということだ。興味深い。
鎌倉にて、私服の男の子グループは珍しい。
通りすがりに加えてきた会話は以下の通り。
「神奈川の首都のはなしなんだけど」
「神奈川に首都はねえ」
「え、神奈川の首都だよ?」
「だから神奈川に首都はねぇだろ、馬鹿なんじゃないのこいつ」
「え、まじで意味わかんないんだけど」
どこから来て、鎌倉になにをしに来た子たちなんだろう。
新婚さんの先輩に、今日のお夕飯なんですかと尋ねると、お刺身と肉じゃがにしようとおもうんですが変じゃないですか、と聞かれたので思わず、バイト中帯選びで悩む女の子に相談されたときと全く同じテンションと口調で、変じゃないですよあいますよ!と返してしまう。
榛原さんは、と聞かれたので、今日は寿司を買って帰ります、と答える。
あとは冷蔵庫内にある蒸し野菜でサラダと、大根のお味噌汁。明日から夫がアメリカに出張なので、寿司と味噌汁を食べさせておくのです。